すみつけ祭り

先月、祖母の家に行ってきました。祖母の家は大分県の木浦鉱山というところにあります。とても長閑なところです。

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木浦鉱山は、大分県の南西のはじっこのあたりにあって、周りは全部山なんです。鉱山という名前の通り、昔鉱山があったところです。江戸時代から銀や錫が穫れる鉱山として栄えてきましたが、昭和に入って閉山して、今は人口が46人しかいません。そのほとんどがお年寄りという限界集落です。集落にあった小学校も10年くらい前に廃校になったままです。この集落で、2年に1度「すみつけ祭り」というお祭りがあって、それに行ってきました。

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すみつけ祭りは、顔に墨をつけ合う祭りです。切った大根の先に鍋墨を付けて、それをお互いの顔に付け合って、五穀豊穣を祈願します。何でこんなことするのかと言うと諸説あるんですが、鉱山で落盤事故があったときに、若い坑夫が嫁と台所で墨を付け合っていて、事故に巻き込まれずに助かったから、その後入山する前に顔に墨を塗って安全を祈願のが起源と言われています。

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祭りは「やまんかみさま」と呼ばれる神社で行うのですが、そこで墨を付け合った後に、木浦の各家をまわるんです。大幣という大きな竹でできた飾り、これ5mくらいあってすごく重いんですが、これがやまんかみさまとまえんかみさまの分で2本あって、僕はやまんかみさまを担ぎました。集落にある家全部で20軒くらいかな、担いで順番にまわりました。

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その大幣2本と、この荒神さまという神様3人で家を回って、荒神さまが舞を舞います。そうすると、その家の人がお酒やら食べ物出してくれるんですね。お菓子とか、蒲鉾とか、赤飯とか、猪汁とか、鹿肉とか。それをさっと頂いて次の家に行きます。立ったまま酒をぐびっと飲みほして、一口何か食べるわけです。なので、だんだん酔っ払ってベロベロになっていきます。大変です。

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これは僕の祖母と、集まってきた親戚達です。この中で誰も、今は木浦に住んでないんですね。僕が小学校のときは、曾祖父と曾祖母と祖父と祖母の4人で暮らしてました。僕も毎年盆や正月は木浦に帰ってました。最初に曽祖父が亡くなり、次に祖父、曾祖母が亡くなりました。今は祖母だけなんですが、祖母も去年体を壊しまして、今は叔母の家でリハビリをしています。

そうして次々に木浦は人がいなくなっていて、すみつけ祭りも1度10年くらい前に祭りができなくなったんですが、木浦を離れた人や子供や孫の世代がこの時期だけ木浦に帰ってきて復活させて、今も祭りが開かれてます。

ただやっぱり木浦の人はどんどんいなくなってるんですね。僕にとっては子供の頃に夏休みをいつも過ごした場所で大好きな場所ですが、暮らしている人にとってはそんな甘い郷愁ばかりではない現実があります。それでも、2年に1度のお祭りの時だけでも、こうして木浦が好きな人たちが帰ってきて、何とか木浦の祭りを続けようとしています。みんな木浦が大好きなんだと思います。大分県佐伯市木浦鉱山。ほんとうにいいところです。