二宮佐和子

僕には3つ年下の妹がいます。佐和子という名前です。その妹が今年、結婚しました。

妹が小学生の頃、足がとうもろこしの腐った匂いがすると言って馬鹿にしていました。中学生になってソフトボール部に入ると、野外の練習で焼けた妹を色黒だと言ってからかっていました。おとなになってからも、会う度に毎回「あれ、太った?」と尋ねるという恒例の挨拶を今でも続けています。

中学、高校といじめられっ子だった僕は、家に帰ってそのうっぷんを晴らすために妹にいじわるばかりしていました。特に中学の頃にはクラスの女子全員からキモいと無視されていて女性にトラウマを抱いていたので、母親や妹など家族以外の女性とはまともに会話できなかったんですね。それでことあるごとに妹をからかい、いじめていました。

すると妹は毎回「好っかーん!」と博多弁で文句を言いながらも、「お兄ちゃんお兄ちゃん」と言って僕に付いてきました。何度か泣かせるくらいいじめたこともありますが、それでも「お兄ちゃんお兄ちゃん」と言って付いてくるのです。僕の買ったCDを聞き、僕がパソコンを買ってホームページのデザインをやっていると言うとデザインの専門学校へ行くと言い出しました。全く主体性のないやつだ、当時はそう思っていました。いじめられてもヘラヘラと笑って付いてくるし、僕の真似ばっかりするし、親の前ではいつもいい子で怒られのは僕の方だし。

しかし最近、こいつは主体性の塊なのではないかと思い始めました。

今月結婚パーティーをやるから司会をやって欲しいと電話をかけて来た時です。指定された日付は、僕の出場が決まっているトレイルランニングのレースの日でした。信越五岳という、長野と新潟の5つの山を超える、110kmにも及ぶ過酷なレースです。朝5時にスタートして翌日3時に制限時間を迎え、その後午後3時から東京でパーティーの司会をしてくれと言うのです。いやいや、無理だよと僕は言いました。まともに立っていられるかもわからないし、3時に間に合わないかもしれない、他に司会頼める人いくらでもいるでしょ、そもそも何で新婦の兄が司会するんだよと。

すると妹は「だって面白いやん」と言ったのです。空いた口がふさがりませんでた。まあね、確かに面白いよね、それじゃ仕方ないね、そう言って引き受けることにしました。

  • 新婦の兄が結婚パーティーの司会をするのはおかしいという常識なんて、全く意に介さない。面白ければそれで良い。
  • 相手が自分をいじめてくるかどうかなんて、全く意に介さない。相手はただ、兄である。
  • 兄のマネかどうかなんて、全く意に介さない。自分が良いと思ったものは良いし、進みたいと思った道は進みたい。

思い起こせば、妹の行動原理はそんなシンプルなものだったんじゃないかと思います。自分が良いと思ったものは良い、ただそれだけなんじゃないかと。

そんな妹が、36歳にしてようやく自分の人生の伴侶となる人と出会い、結婚しました。彼女の選択はきっと、今回もシンプルなものだったのでしょう。周りが何と言おうと、兄が何度からかってこようと (事実僕はこれまで何度も新郎の名前をネタにからかっています)、好きだと思った相手は好きなんだということなんでしょう。

そんな彼女の選択を、僕はこれからもずっとからかいつつ、応援していきたいと思います。

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佐和子ちゃん、結婚おめでとう。