落書き一歩外へ

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僕は中学高校といじめられっこで、トイレで殴られたり、バリカンで頭5厘に刈られたり、クラスの女子全員に無視されたりとかしてたんですが、絵を描いて友だちに見せると面白がってくれたりして、それが好きでした。

特にクラスの人気者の似顔絵とか、先生の似顔絵とか、そういうのの受けが良かった。授業中、ノートの切れ端にみんなが嫌いな先生の絵を書いて、赤いペンで上から血をドバーっと書いて、隣の席の友だちにこそっと渡すと、堪えきれずくすくす笑い出したりするんですね。勉強が嫌いだったので、授業中はずっとそんなことばかりしていました。

学校はずっと大嫌いだったけど、プリントの裏や教科書の隅、ノートの切れ端に落書きするのは好きでした。それは人に見せたら面白がってくれたからだと思います。運動会の徒競走は常にビリだし、巧みな話術で笑いを取ったりもできなかったから、唯一クラスで人に喜ばれる手段が落書きだったんですね。

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中学の頃紙を折って作った小さいマンガ本は、同じマンションに住む国武くんにしか見せなかったけど、それでも彼が喜ぶので張り切って作っていました。さっき押入れを探したら8巻まで出てきた。

今はインターネットがあるけど、僕が中学の頃はまだなくて、家にパソコンはあったけど絵を描くツールが花子くらいで、パソ通はあったけど世界に落書きを公開するなんて発想は全くなかったんですね。だから友だち1人に見せて終わりで、当時はそれでも全然かまわないと思ってました。

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僕の好きな言葉に「一歩外へ」という言葉があります。はてなの社長のid:jkondoが、2007年の夏に当時彼が住んでいたアメリカのシリコンバレーから一時的に日本に帰ってきて、社内でやったプレゼンテーションの時の言葉です。

プレゼンが終わって、僕が「世界に向かって何かを発信する自信なんかない。思いついたギャグとか、撮った写真とか、書いた落書きとか、身内だけに喜んでもらえればそれでいい。それじゃだめなんですか?」と質問すると、彼は「一歩外へ、ということかな」と言いました。

これまで誰にも見せずに自分のパソコンに溜めてたものを、まずは数人の友だちに、それを友だちの友だちに、それを誰もが見られるように。そういう風にして、一歩ずつ外に出られるように、そっと背中を押すようなサービスを作っていきたいと、そういうことを彼は言いました。ずいぶん感嘆したのを覚えています。

それから2年経ってうごメモはてなを作ることになった時、その言葉と自分が中学の頃に書いた大量の落書きを思い出しました。ニンテンドーDSiは年齢層の低いユーザーが多いですから、このサービスを、僕が昔感じてたことと同じようなことを感じている子供たちの背中を押すサービスにしたいなと思いました。これまでノートや教科書の隅っこに書かれ、誰にも見られることもなく埋もれていったたくさんのパラパラ漫画や落書きが、これで世の中に出て行って、それが多くの人に面白がられて褒められるっていう経験をたくさんの人がしてくれたらいいなと。

友だち1人に褒められるのももちろんいいけど、1人よりは2人、2人よりもっと多い方がもっともっと嬉しいですからね。

Flipnote Hatena

そんなうごメモが、先週世界各地でもリリースされました。海外では「Flipnote Studio」と「Flipnote Hatena」という名前です。

これまでは日本国内でしかうごメモを作って投稿することができなかったから、インターネットで世界に公開といっても、見てくれるのは日本国内の人がほとんどでした。でもこれからはそうじゃない。ここ数日、世界中からものすごい数の人々がはてなを訪れていて、予想を超えるその勢いに驚きまくってるくらいです。既に多くの日本の作品に、英語のコメントが付いたりしています。多くの子供たちにとって、これが初めての国際交流の経験となるのかもしれません。

日本は日本語だけが公用語の国で、英語の文書があふれる英語圏に比べたら、テキストがメインの学問や文学やなんかの分野だと、なかなかみんながみんなインターネットで世界に出て行くことは難しいですよね。だけど日本には、世界に誇るアニメや漫画、ゲームの文化がある。みんな小さい頃から漫画やアニメを見て育ってるから、日本人は平均的に絵が上手な民族なんじゃないかと思います。

だから世界というとちょっと不安に思う方も、自信を持ってうごメモを投稿してみてください。

日本からの一歩外、世界への投稿ですよ。しびれますよね。